レジーナさんちの徒然黙示録

屋敷の一室にある雑記帳 今日は誰が何を綴るのか…

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§ 翡翠の心 -第3幕-

【Red Hearts】


Side Story『翡翠の心 ~The Heart of Nephrite~』

 第3幕 『これがわたくしの答えですわッ!』





----フェレト=レジーナが、母・ネフリータに試練を課されてから1ヶ月。

課題とはいえ、歴戦の戦士であった我が母との対決。
圧倒的不利な状況に、父・シュラグノーらから魔道・戦術についての助言を受けたフェレト。
いままさに、今後の命運を決めるといっても過言ではない"時"が迫っていた。





焼く様な日差しが、採掘場跡地に降り注いでいた。
ネフリータとシュラグノーが待つ跡地に、ちょうどフェレトがやってきた午後2時。

「ふふ…、お母様、ご覚悟はよろしくて?」

「あらフェレト、昨日までとは…、ちょっと(特に口調が)違うみたいね。
どんな答えを出したのか、見せてもらうわ」

両者が向きあい、どこか楽しそうに不敵な笑みをぶつけ合っている。
しかし、ここ1月の様子を見ていたシュラグノーにはむしろ滑稽に見え、笑わない様にするのが精いっぱいだった。

「じゃあ確認するぞ。
ネフリータは一切の魔道の仕様を禁止。
フェレトはその状態のネフリータに自分から触れる、もしくは打撃による攻撃を加えれば合格だ。
ああ、フェレトには魔道の使用制限はないからな?」

そんな状況を打開するかの様に口火を切ったシュラグノー。
聞いているフェレトとネフリータは、黙ったまま頷くだけ。
すでに2人とも臨戦態勢だといえた。

「始めるぞ…」

シュラグノーはそっと2人に目配せして小さく口を開いた。
2人の間に立ち、右手を高く掲げる。
フェレトの脳裏には数日前のシュラグノーの言葉が浮かんでいた。

(いいかフェレト、今回の課題はお前の力量試し。
ネフリータもお前が動きを見せる前に一気にカタを付けるって事はないはずだ。
更に2人の能力差、1番の油断は始まった瞬間にある---)

「始めッ!」

高らかな声と共に腕が振り下ろされた。
ついに課題のスタートである。
1つの翡翠色がほぼ真横に靡く。

「先手必勝ッ!
アァースリフタァーーッ!!」

ガッ、ゴォッ!!

「あら…?」

走り出したフェレトのアースリフターで、ネフリータの後ろに石柱が現れる。
不意を突かれて思わず後ろを見返るネフリータだが、フェレトにそんな間を与えるつもりはない。
更にアースリフターを発動させる。

(イメージ…、槍を…イメージ!)

「ハァッ!!」

カシィンッ!

今度はネフリータの正面から少し歪な石槍が出現する。
その先端は勢いよくネフリータの顔に向かって延びた。

「惜しい…、けどその程度の不意打ちじゃ私は捕えられないわよ?」

が、寸前でその石槍はかわされ、後ろの石柱のみを穿っている。
片目を瞑ってウィンクでもする様にいってみせた。
しかし、肝心のフェレトの姿が見えない。

「せいッ!!」

更なる追撃、フェレトの拳撃が石槍の死角からネフリータに迫っていた。
フェレトの小さな身体と、すばしっこさならではの攻撃である。

「でぇ~もっ」

「…!?」

パッァーン!!

その拳撃すらネフリータには届かない。
もう少しのところで追撃を察したネフリータが、石槍を膝で蹴り砕いたのだ。
G-A最高峰と名高い格闘術を持つ者にとって、ただの石槍を砕く程度、魔道がなくとも難ではない。
逆に不意を突かれた事で、フェレトは後方に飛んで距離を置いてしまう。

「…最初っから攻めてくるとは思わなかったわ~。
いいトコ付いてたし、退路を断ってから石槍、ダメ押しの打撃…と、なかなか考えたわね。
ちょっとだけ危なかったわ」

「……」

腕を組んでうんうんと唸る様に余裕を滲ませるネフリータ。
フェレトは体勢低く構えをとったままネフリータを見据えている。

「母様…、魔道がないっつってもスペックがチートなんじゃないの…?」

逆に余裕がなくなって母を皮肉ってみるフェレト。
嫌な汗をかきながらも好戦的な表情は崩さない。

「あはは、昔よくいわれたわ~。
でも、そんなクレームつけても…、めっ、だからねっ。
こ・ん・ど・は…、こっちの番っ」

「へ…、わわわっ!?」

ヒュッ、と音がしそうな勢いで一気に距離を詰める。
目にも止まらぬ、という形容が相応しいスピードでフェレトに打撃のラッシュを入れていく。
当然全力ではない、それどころか5分程度の力しか出していない。
しかしネフリータの打撃、フェレトは辛うじて防御に回るのに手いっぱいであった。

(ヤバいヤバいヤバいってば!!
さすが母様、こんな速いラッシュなのに1発1発が重い…!
こりゃ父様がいった通り早めに決めないとジリ貧になってくだけだわ!)

ギリギリの攻防を見せる2人だが、これもネフリータが防ぎきれる加減を見切って攻めているだけなのだ。
それ故にフェレトの消費も早く、考えの通り長期戦になれば不利になるだけである。
追い詰められつつあるフェレトだったが、脳裏にはまたも数日前の父の言葉が思い出された。

(最初の攻撃を外したら、というか外さないのが1番いいんだが…。
もし外した場合、間違いなくお前は不利な状況に立たされている。
パワー・スピード・スタミナ、どこをとっても現状でネフリータより優れた面はありえない。
なら、その局面を打開するのは…、あっと驚く意外性だ---)

あっと驚く意外性。
やはりあらゆる面で劣るフェレトには、不意打ちや意表を突くといった様な戦法しかない。
今回の課題の真意とは、その圧倒的劣勢にどう答えを見出すかなのだ。

「このままじゃバテちゃうだけよ。
さぁ…、どう動いてくれるの?」

「くっ!」

フェレトが思考を巡らせている間、ずっとラッシュを続けていたネフリータ。
特に息を切らす事もなかったがフェレトを試すべく、自ら一瞬の隙を作り出す。
すかさず攻め手をかわし大きく飛んで距離を取るフェレト。

「はぁ…はぁ…、ふぅ…」

肩で息をして呼吸を整える。
ネフリータと違い、息も切らさず、とはさすがにいかなかった。
が、また攻められては堪らないといわんばかりにフェレトから仕掛ける。

(意外性…ねっ!)

「アースリフタァーッ!」

ゴォン!

またもネフリータの背後に石柱が現れる。
さっきと違ったのは、ネフリータは一切向き返る事もなく、フェレトの方を見据えたままだった。
同じ手は通用しない、という事なのだろう。

「もう油断もしてくれないよね~…。
もいっちょっ、アースリフターー!」

ガァンン!!

更にアースリフターを繰り出していく。
しかし、違ったのはネフリータばかりではない。
今度のアースリフターは石柱であった。
それもやたらと巨大な。

「はぁ…、いまになってそんな初歩的ミス…?
私もちょぉ~っとガッカリ~…、かなっ!!」

ガオォンッ!!
ガシィン!

目の前の石柱に、露骨に不快感を表すネフリータ。
やれやれといった風に頭をかいたかと思うと、一瞬にして強烈なアッパーカットを石柱に叩き込む。
巨大な石柱はバラバラに砕け、破片が宙へと舞った。

「これじゃちょっと芸が足りて…って、あら?」

フェレトに話しかけたつもりだったネフリータだが、その得意気な表情も一瞬のものとなる。
石柱の向こう側に、フェレトの姿がなかったからだ。

(よしッ、なんとか上手くいった…!
位置も…、おっけー!
でも…、なんか皮肉だなぁ、デカい岩を出すのは得意なのよね~)

その時、ふとネフリータの空が暗くなる。
ハッとなって上を見上げると、眼前には巨大な石斧。
視界で膨らむ影に連れて、ネフリータの真紅の瞳が大きく見開かれた。

「ふぇ、フェレト、これはっ!?」

「喰らえぇーッ!
見よう見まねっ、『断罪の王』ッッッ!!!」

フェレトが巨大な石柱を出したのは魔道の失敗ではない。
意図的に巨大な石柱を出現させ、ネフリータに破壊させたのである。
そして、飛散した石の破片を上空で蹴り砕き、グランドエッジの素材としたのだ。
さすがのネフリータも慌てた様子を見せる、かと思われたが…。

ひょいっ

ズグィァーンッ!!!

あえなく回避されてしまう。
空中で大きな破片をグランドエッジの素材にしなければならない為に、力不足のフェレトには両足で蹴り砕くしかなかった。
それ故に石斧は両足に装着され、重力に任せて落下する事しかできなかったのだ。
そして、唐突とはいえ熟練のG-Aに直線的な攻撃をかわすのは難しい事ではなかった。

「やるわねフェレトっ。
まさかそんな大技使ってくるなんて…。
でも、敵が視界から消えたら上って定石よ?
詰めが…、あ・ま・いっ♪」

「あわ、はわわわわっ!」

ちょうど真横に立つ形になった2人。
嬉しそうな笑顔に打って変ったネフリータと、慌てて両手をバタバタと振るフェレト。
つんつん、っとフェレトの頬を突っつきからかって見せる。

「そぉれっ」

ゴッキャァン!!

笑顔のままのネフリータの下段蹴りである。
石斧は砕け散り、破片と共にフェレトは地面を転がった。

「…これもダメ…かぁ、…ぁつっ!?」

辛うじて受け身を取るフェレトだが、いまの拍子に足首を痛めたらしい。
苦悶の色が浮かんでいる。
いままで傍観してきたシュラグノーも、険しい顔を隠せずにいた。

「最初のコンボまで布石にし、魔道の失敗に見せかけ油断を誘った上で、不意を突いての、不完全とはいえ切り札の断罪の王…。
あれをかわされちゃあ、もう手はない…か」

最初の奇襲、不完全な断罪の王、どちらもシュラグノーの入れ知恵だった。
しかし、どちらも失敗に終わり、まして足を痛めたいまのフェレトには現状どうにもならない。
それがシュラグノーの判断だった。

「まぁよく頑張っただろう…。
これならネフリータの合格ラインにも…」

「笑止ッ!
小賢しい事をいい並べて、相変わらず青いな」

試験を止めるタイミングを計ろうとしていたシュラグノーの独り言を遮断する男の声。
威風堂々とした風貌。
半月ほど前にフェレトの前に現れた男である。

「また唐突な…。
やっぱり貴方でしたか」

「…ふんッ」

しかし、特に驚きもしないシュラグノー。
むしろ想像通り、というところだった。
驚かれなかったのが面白くないのか、元々なのか、男は腕を組んだまま仁王立ちしている。

「貴様のところの小娘、なんといったか…、フェレット?
まぁいい、小娘が諦めていないのに、親の貴様が先にさじを投げてどうする」

「まさか…、ここに来てまだ手があるとは…。
考えなしにネフリータに攻撃を当てるのは、砂漠の中のビー玉を見付けるくらい難しいですよ。
…あとフェレトです」

不機嫌そうな顔のまま口を出した男に、嗜める様に分析するシュラグノー。
本人にとっては小さくないのであろう訂正を付けたして。

「ここまでかしらね…、フェレト?」

「…くっ」

ネフリータが、追い詰める様にじりじりとフェレトとの距離を詰めていく。
フェレトは足首を押さえ、低い体勢でネフリータの視線を受けていた。

(しくったわ…、ここで足痛めちゃうとは…。
お陰で体勢はいい感じになったけど、あんま走れそうにない…かな)

動く気配を見せないフェレト。
しかし、先程から不意を突いた攻撃を繰り返してきた事で、ネフリータの警戒心も高まってきている。
有利な状況だからといって、ヨユーしゃくしゃくご高説、という気にはならなかったのだろう。

(んー、強く蹴り過ぎちゃったかしら?)

などと自分のやり過ぎの心配をしている程度に、かける言葉を選んでいた。
だが、その時、短い静寂を破ってフェレトの声が上がった。

「アァースリフタァーーッ!!」

ドガァッ!!

低い体勢のまま発動されたフェレトのアースリフターである。
またもネフリータの視界を遮る様に石柱が正面に立ちはだかった。

「……」

「……」

しーーん…

いままでと大いに違ったのはそこからの動きがなかった事である。
フェレトが追撃に出る様子もなければ、ネフリータが石柱を破壊する素振りもない。
お互い様子見、というところなのだろうか?

(早く…、もっと早く…っ!!)

相変わらず動く気配のないフェレト。
しかし、似つかわしくない汗をかき、身体も強張っている。

(上からの攻撃は…、ない。
正面からも…、何かの誘い…?)

注意深くフェレトの出方を窺うネフリータ。
だが、気配がない。
湧き上がる疑問が違和感へと変わり、その違和感がわずかな焦りを生む。

「はぁッ!」

ドゥギャーン!

ついにネフリータは目の前の石柱を蹴り砕いた。
それも先程の断罪の王に学んで下に破片が飛び散る様に。
こうなってはフェレトも仕掛けざるを得ない。

(…っ、間に合わない…!?
くぅ~~、いっけぇーーっ!!)

「でぇぇやぁああッッ!!!」

またしてもネフリータの眼前を舞う砂塵。
フェレトの声を察し、念のため1歩後ろにステップして回避に備えるネフリータ。

ブバァッ!

突如として砂塵を切り裂き、ネフリータに迫る拳撃。
足を痛めた者のものとは思えぬ凄まじさだった。
が、砂塵を目眩ましとしての攻撃を予期していたネフリータである。
回避に周り、すでにフェレトへのカウンターの体勢に入ろうとしていた。
だが…。

「…なっ!?」

ネフリータは愕然として真紅に輝く瞳を丸くする。
なぜなら、カウンターを当てようとしたフェレトの『身体がなかったのだ』。
厳密にいえば、『飛んで来たのが肘から先だけだった』のである。
この時、間違いなくネフリータには隙が生じていた。

「ハァアッ!!!!」

ゴゥッ!!

「ッッ!!??」

響いた声に、一瞬で視線をもうおさまり始めた砂塵の方へ視線を戻す。
まさにフェレトがその向こうから現れ、槍の様な正拳突きがネフリータへ向かって来ていた。
反応は遅れたものの、すぐにネフリータは冷静さを取り戻す。

(いまのはなに…!?
いえ…、それよりこの拳撃、ギリギリで避けられる!?
……ッ!!)

辛うじてかわせるかも知れない、というのがネフリータの見立てであった。
しかし、ネフリータは気付いてしまう。
黒く、そして鈍く輝くその拳に。
その拳がいま、自分に迫っている事実に。

「そう…、いくら母様でも…。
いいえ、母様だからこそ、これだけは避けられないッ!!
これがっ…、これがあたしの答えよッ!!!!!」

「フェレトッ!!!
くっ!!」

カッシィイーーンン!!!!!!!



跡地に響き渡った打撃音。
腕を交差させ、拳撃を防御するネフリータ。
飛んで来たフェレトの勢いで、少し後ろに押されるも防ぎ切っていたのはさすがである。

…どたっ

一瞬の間、時間が止まったかの様に見えた2人だが、フェレトは力なく地に落ちる。
またも2人は固まり、砂と風の音がやけに耳に付いた。

「あ…、あれは単に足の痛みのせいじゃあなかったのか…」

離れたところから傍観していたシュラグノーには全てがはっきりと見えていた。
シュラグノーがいう通り、体勢を低くしたまま動かなかったのは足の痛みのせいだけではない。
その手で地面に触れ、魔道を使うためだったのだ。

アースリフターにより、ネフリータの視界を遮った上で何もしなかったのは時間稼ぎをするため。
今回の対決が課題であるという事、フェレトがどう動くかを待つネフリータを逆手に取っての事であった。

更に左手に『腕』の形状のグランドエッジの形成。
右手のみに、ネフリータの術式兵装・黒衣の女王を形成していたのである。
しびれを切らせたネフリータが、石柱を破壊したと同時に左手の『腕』を投げつける。
そして、隙が生じたところに兵装された右手で追撃をかけたのだ。

腕の細かい造形に、右手だけとはいえシュラグノーですら無茶という術式兵装・黒衣の女王。
時間稼ぎが足りず、腕の造形は止まった状態で見れば雑なものになってしまった。
同様に、フェレトが本来は肘から先に装着するつもりであった兵装は右拳に限られている。
しかし、その状態ですらネフリータにイチかバチかでの回避を止めるほどの脅威だったのも事実である。

時間とも、自分のスタミナとも戦ったぎりぎりの選択。
フェレトなりに考え、足掻いて、この圧倒的不利な状況。

"最初から全部出来るわけない。わずかな部分でも積み重ねればどうにでもなる。"

憧れの母の言葉への"答え"であった。

「…貴方は、ここまで見抜いていたんですか?」

そうこぼしながら振り返るシュラグノー。
しかし、問いに答えるべき男の姿はもう消えている。
特に驚く事もなく、半ば呆れとも取れる微笑みで視線を戻した。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

シュラグノーの視線の先、倒れていたフェレトがやっとの事で仰向けに姿勢を変えて大きく呼吸している。
ネフリータも構えを解き、頭を掻きながら苦笑いを浮かべていた。
まさに、やっちゃった、という顔。

「はぁ…はぁ…、あはは…、当たっちゃった♪」

「わざとよ、わ・ざ・とぉ~
サービスしてあげたんだからね~」

汗と砂にまみれた顔で悪戯っぽく笑うフェレト。
思わずあけすけな冗談を笑顔で返すネフリータ。
中腰になり、指を左右に振って見せた。

「…なぁんてね。
フェレト、ほんっとぅによくやったわ。
予想以上なんてもんじゃない、もうとびっきりよっ!」

心底嬉しそうにそう切り返して、ネフリータはフェレトを抱き起こした。
顔や服に付いた砂埃を掃いつつ、満面の笑みを惜しみなく輝かせる。

「んっ…、母様」

フェレトは小さく呟き、素直にその身を母に委ねた。

「本当によくやったな、フェレト。
無茶しやがって…」

「てへへ…」

歩み寄りながら娘を称えるシュラグノー。
フェレトも決して力強くはないながらも、照れ笑いで答えて見せた。

「これで文句なしに課題はクリアだな!」

「あら、でもまだまだ魔道の発動も遅いし、体術も発展途上!
それに…、術式兵装ももっと訓練しないとね♪」

浮かれているといっても過言ではないほどに、2人とも喜びに浸っている。
フェレトはまだまだ前途多難といえた。

「母様、あたしね…」

びゅわあっ
バササッ

「あぷぁっ!?」

身体を起こしたフェレトが何かいいかける。
しかし、それは吹き抜けた風によって阻まれた。
自身の髪で溺れそうになりながら、やっとの思いで翡翠色を泳ぎ切った。

「…はい、フェレト」

「え?」

目の前にはトレードマークのポニーテールを下ろしたネフリータ。
フェレトに差し出された掌には、いつもネフリータが使っている髪留めが納まっていた。
瞳をまん円にして、その掌とネフリータの顔を往復させる。

「いつまでも髪下ろしっぱなしじゃ動きづらいでしょ。
溺れてばっかじゃ情けなくて見てらんないの。
使いなさい?」

無言のまま髪留めを受け取る。
唇を尖らせてつつ、後ろ手に髪を纏めていくフェレト。

「…どう…かな?」

ちょっと照れた様な、はにかんだ顔で母に尋ねる。
しかし、ポニーテールを作ろうとしたのであろうが、慣れないせいもあって大きく右に片寄ってしまっていた。
ネフリータは一瞬きょとんとしたものの、すぐに笑顔になる。

「よぉく似合ってるよ、フェレト」

「ありがとうっ、父様、母様っ!」



G-Aとして旅をする途中のフェレトが、ブルク城でリオナ一行と出会う1年ほど前の事。
小さな天使が、少しだけ自分の空を掴んだ日の事だった----。



  -- 本編 Red Hearts へ続く --





 ---- 魔道辞典 ----

※今作中では魔道の「操作」から行っているが、第1幕の解説でもある通り「生成」を省略しているだけである。
術者のスタミナを更に消費すれば、魔道により土の「生成」をする事も可能。


●アースリフター(Earth Lifter)
地面に手を当て、土の魔道の力で離れた位置の地面を隆起させる。
武器とも盾とも扱える土属性の最も基本的な魔道。
地中にある素材由来な物なので、攻防共に物理属性である。
また、飛んでいる敵には効果を発揮し辛い。

用途により、いくつかのパターンに派生する。
・石槍:尖った槍状の岩が隆起し、対象を穿つ。

・石柱:自分と対象の間、もしくは自分の周囲に石柱を隆起させ、攻撃を防ぐ。
    対象の周囲に石柱を隆起させ、囲んで捕える。


●グランドエッジ(Ground Edge)
土の魔道で地中の金属や炭素etc.を集めて、イメージした武器状に形成し、装着する。
剣・斧による斬撃、槍による刺突、鎚による打撃などバリエーションは多岐に渡る。
硬度・形成速度は技量・熟練度に比例し、重量・消費スタミナは反比例する。

・断罪の王(Regno Exsequens / レーグノー エクセクエンス)
グランドエッジの応用であり、シュラグノーのオリジナル魔道。
高い位置にある(投げ上げるetc.)岩を砕き、腕に巨大な石斧を装着。
そのまま落下し敵を両断する。
砕かれた岩は目眩まし、牽制の効果もある。

※フェレトの場合は力不足を補う為に両足に装着。
両足が石斧に包まれる為、発動後に身動きが取れなくなるデメリットがあった。


●術式兵装・黒衣の女王(Armationem Nigredinis Regina / アルマティオーネム・ニグレーディニス レジーナ)
ネフリータのオリジナル魔道。
土の魔道により、地面から鎧状の装甲を形成し、全身に装着する。
形状は自分のイメージ次第であり、硬度・形成速度は技量・熟練度に比例し、重量・消費スタミナは反比例する。
優れたセンスと莫大なスタミナを必要とし、ネフリータ以外に使用しようとする者はいないらしい。

・術式兵装・夜の旋律(Armationem Noctis Melodia / アルマティオーネム・ノクティス メローディア)
フェレトが用いた、術式兵装・黒衣の女王の簡易版。
発動方法・条件に変化はなく、全身ではなく部分的に発動した場合の総称。
後のインパクト・ブリッドもこれに含まれる。(本編『Red Hearts』参照。)
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2010/06/21/Mon 22:27:12  Collaboration./CM:1/TB:0/
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