レジーナさんちの徒然黙示録

屋敷の一室にある雑記帳 今日は誰が何を綴るのか…

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§ 翡翠の心 -第2幕-

【Red Hearts】


Side Story『翡翠の心 ~The Heart of Nephrite~』

 第2幕 『あたしが勝つにはどうすれば?』






----晴れて"Guardian-Angels(守護天使)"、略して"G-A"に入隊したフェレト=レジーナ。

しかし、旅に出るならば、少なくとも自分の身は自分で守らなければならない。
初めて間近で"魔道"を目にし、自分の力量・知識の浅さを思い知るフェレト。
そんなフェレトに、両親から課題が与えられる事になる。





「あー、もうッ!
ちっっとも上手くいかないじゃんよぉー!!」

採掘場跡地で風に靡く翡翠色。
へたり込んだフェレトから不満の叫びが上がっていた。

初めて魔道を目にしたあの日から、早2週間。
毎日の様にこの跡地へ魔道の修練に来るも、一向にその技術は向上の色を見せていなかった。

「もう半分…。
そんな時間もないってのに…!」

明らかに焦りを感じているフェレト。
彼女に何をそれほど焦る理由があるのか?
それは、あの2週間前の夜に遡る----。





慣れもしない魔道の使用で、疲弊し気を失っていたフェレトが目を覚ます。
魔道の発動は自身のスタミナを消費する。
なので回復さえしてしまえば何の問題も残らない。

「お、目が覚めたかぁ、フェレト」

そろそろフェレトの目も覚める頃だろうと、部屋へやって来ていたシュラグノーとネフリータ。
横になっているフェレトの顔を覗き込む様にしている。
その顔に心配の色はさほどない。
やんちゃし過ぎた子供へ向ける微笑み、というのが相応しい表情だった。

「母様…父様も…」

まだハッキリしない意識の中、ぼんやりと2人の顔を行き来する。
否定しようのない気だるさがフェレトに残っていた。

「最後まで話も聞かないで…、あんな無茶するからだぞ?」

「無茶ってな~によ!
けっこーどうにかなるもんよ?」

子供の悪戯を咎める様な軽い口調のシュラグノー。
それを聞いて納得がいかない様子のネフリータ。
フェレトの目にはいつもの光景が広がっていた。

それからしばらく3人の談笑が続いていく。



「あ…、それでね、フェレト」

「?」

ひとしきり話した後、ネフリータが思い出した様に切り出した。
ぽん、と両手を正面で合わせる。
ベッドに座っているフェレトも不思議そうな顔で答えた。

「さっき2人で話し合って決めたんだけど…」

そこまでいうとシュラグノーの方へと目配せした。
気付いたシュラグノーが、その先を話し始める。

「フェレト…、お前に課題を与える。
1対1で、魔道も武器も使用しないネフリータに『自分から触れる』事…だ」

そう厳しげな表情で告げる。
ネフリータは少しだけ申し訳なさそうな複雑な態度であった。
昼間に続き、きょとん顔のフェレト。

「え~っと…、それって…。
…お母様ぁ~ん」

甘えた様な声で母・ネフリータへと両腕を広げる。
その効果はバツグンだった。

「あ~ん、フェレト~」

花の香りに誘われた虫よりもあっけなくフェレトを両腕で包み込むネフリータ。
頬ずりしながらなんとも満足気である。
そこでフェレトは急に真顔に戻った。

「こゆーんじゃダメなの?」

「ダメだ。」

よく知った母の習性を利用した策を弄してみるも、一瞬で父に却下される。
やっぱしかぁ、と表情に表すフェレトは、妬むかの様なシュラグノーの視線には気付かなかった。
子煩悩な父母にして、したたかな子である。

「…だからお前に1ヶ月の準備時間を与える。
その間に出来得る事をやってみろ」

ちょっとふて腐れた様に付け足したシュラグノー。
この日から、フェレトの修練の日々が始まったのだった。





----2日目。
さっそく跡地に赴いたフェレト。
魔道の扱いに慣れようと、母を連れて監督をしてもらっていた。

「アーースリフタァーーーッ!」

ズガァン!

右手の紋章を光らせ、意気揚々と地面を隆起させる。
が、やはり現れたのは均整の取れない、ゴツゴツとした岩である。
それもやけに巨大な。

「だーっ!なんで!?
なんでこんなのしか出ないの~!?
…でやっ!でやっ!でやっ!!」

ズガァ!ドゴォ!バギャァ!

頭を抱えて髪を振り乱すフェレト。
一瞬うな垂れるも、すぐに顔を上げ、今度はがむしゃらにアースリフターを連発させる。

「…ちょ、ちょっとフェレト?
そんな連発しなくても…」

見かねて口を挟むネフリータ。
戸惑いの色が伺えるが…。

…ぽてり

手遅れだった。

「ふぇっ、フェレトーー!?」



----4日目。

「う~ん…、やっぱり…でも?」

レジーナ邸のリビング。
ソファーの上でクッションを抱いて寝転がるフェレトの姿。
小さな唸りを上げて、分かりやすく悩んでいた。

「どうしたフェレト。
魔道で分からないところでもあるか?」

そこにやってきたシュラグノー。
助け船が出せるならと、うずうずした様子でソファーに腰を下ろした。
しばらく考えてからフェレトが口を開く。

「…あのさ、旅とかで表立って行動するんだったらさ。
やっぱりお嬢お嬢した方がいいのカナ?
ほらっ、口調とか!」

「…え?」



----6日目。
またしても跡地。
相変わらずもなかなか上達の気配のないフェレト。
ネフリータは助言を出すわけでもなく傍観に徹するばかり。

「グ・ラ・ン・ドぉ~…エェーーッジ!」

ズボッ!

溜めに溜めた咆哮と共に、右手の紋章が輝きを放つ。
地面から抜かれ、天高らかに掲げられたその腕には…。

「だぁーっからこれじゃ切れないじゃないのーーッ!!」

ぶんぶんと振り回される腕。
そこに装着されているのは、斬れ味どころか尖った部分すら探すのが難しい岩の塊。
それもやたらと巨大な。
棍棒か鎚と表現するのが正しいだろう。

「…うぐぐぐ。
だあっ!だあっ!だあっ!」

ズバッ!ズバッ!ズバッ!

次々に現れては消えていく岩の塊。
光りを纏ったその姿はさながらイリュージョンの様にも見えた。
が…。

…ぽてり

「あ、また倒れた」



----8日目

「…え~、お嬢って…はぁ?」

これまた自宅のリビング。
足をパタパタさせて、1人天井に悩みをブツけるフェレトの姿。

「ん~…」

「ん、どうかしたかネフリータ?」

その様子を扉の陰から並んで窺っているのはレジーナ夫妻である。
伝染したのかネフリータまで小さく唸りを上げた。
気になったシュラグノーはすかさず問いをかける。

「あ~、…いや、ね?
フェレトもああいってるし…、私もお嬢お嬢した口調の方がいいのかしら?」

「…え"?」



----10日目。

「アァーースッ…リフタァーーッ!!」

バギィン!

「っだーー!?」

高らかに叫び、大岩を現出させ、頭を抱えるフェレト。
一連の流れの様に同じ事を繰り返している。
溜まらずネフリータが助言を出そうと口を開いた。

「う~ん、たぶんねフェレト。
力みすぎてるんだと思うわ。
もっとリラックスよ、力を抜いて!」

「ふ~んむ…」

考え込むフェレト。
眉間にしわを寄せた難しい顔で腕を組む。
ひとしきり思考を巡らせた後、すっと手を地に落とす。
静かに息を吸い込んだ。

「…あぁーすりふた~~」

ぽひゅ

まったくといっていいくらいに、力の入っていない声と間抜けな音。
ネフリータは開いた口が塞がらなかった。
地面から手を放しつつ、握り拳を震わせていくフェレト。

「…だぁーーーーッ!!」



----12日目。
またまたリビングで足をパタパタしているフェレト。
いままでと違っていたのは、悩んでいる訳ではなく、本を読んでいるのだ。

「お、魔道教本でも買ったのかフェレト~。
なんだいってくれれば買ってきてやったのに」

その様子を見て嬉々として近付くシュラグノー。
気付いたフェレトは何とも不思議そうな顔をしてみせる。
振り向きながら、手にした本の表紙をかざした。

「これねー、ちょっと相談したら通りの角の家のお兄さんがくれたのー。
これでお嬢様になれるんだってさっ」

至って無邪気なフェレトにそういわれ、シュラグノーが目にしたのは、確かに『ツン●レ用語集』。
あんぐりと口を開いて、一瞬時間が止まった。

「…ならぁーーん!!」

びりびりびりびり

「ちょっ!?
まだ半分くらいしか見てないのにーーッ!」



----そんなこんなで2週間。
期日も折り返しそうだというのに、いまだ上達の糸口も掴めないでいた。

「はぁ…、ちっとも尖ってくれないんだもんなぁ…」

この2週間ばかり通い詰めた跡地で途方に暮れているフェレト。
地に横たえた肢体を夕陽の朱に染めて、哀愁にも近いものを漂わせている。
力無い溜息ばかりが大きく響いて聞こえた。

「…ふん、笑止ッ!
貴様には想像力が足りんのだ」

バッ!

静寂の中に、突如として反響する声。
フェレトは一瞬で身体を起こし、声のした方へと目を向ける。
そこには威風堂々という言葉が相応しい男が、腕を組んで仁王立ちしていた。

「…アンタ誰?
ってかいつからそ…」

「笑止ッ!!」

「……」

緊張感を纏わせ、疑問をぶつけようとしたフェレト。
だが、その男の声に遮られてしまう。
妙な静けさが辺りを支配していた。

「…ふん、さっきから見ていれば馬鹿デカい岩を出すばかり。
貴様遊んでいるのか?」

無音を割る男の挑発的な口調。
あくまで蔑む様な態度に、フェレトは腹に据えかねた。

「カッチーンッ!
人が必死になってやってんのにもうちょっといい様ってもんがないワケ!?
てゆーか、さっきから見ていればって、アンタ…ストーカーかなんか…」

「喝ァー!!」

「……」

ただでさえ内心苛立っていたフェレトは、捲し立てる勢いで口を荒げる。
が、それさえ男によって阻まれてしまったのだ。
またしても静けさがその場を包み込む。

「貴様は石槍を出したいのだろう?
貫こうという気概が足りんのだ、小娘」

「小むっ!?」

紡ぐ言葉はやはり挑発的なそれ。
フェレトはフェレトで喰い付く場所を間違えているが。
その怒りは一気に沸点へと向かう。

「そう、貴様に足りないのはさつ…」

「アァァースリフタァァーッ!!」

カァンッ!

さっきまでの仕打ちを返す様に言葉を遮ったフェレト。
しかしそれだけでは終わらない。
アースリフターのオマケ付きである。
甲高い音が響き渡り、一瞬にして男は砂塵に飲まれてしまった。

「ふんっ、淑女(レディー)に向かって小娘なんて…!
あたしは子供扱いされんのが大ッッッキライなのよッ!!」

悪びれる事もなく、露わにした怒りを振り回すフェレト。
しかし、その怒りは舞い上がった砂塵と共に落ち着きを見せていく。
それどころか表情には驚きが満ちていく。
それはなぜか?
眼前に現れたのは石の円錐、そう円錐なのだ。

「え…、これって…槍…」

鋭いとまではいかないが、確かにそこには「先端」が存在してる。
苛立ちも怒りも忘れ、フェレトは石槍を瞳に映して立ち尽くすばかりだった。

「ふん、目覚めた様だな」

「あっ、アンタ!」

後ろからの声に全身で翻る。
そこには傷ひとつない、仁王立ちする男の姿。
くっと更に追い打ちをかけようとしたフェレトだったが、気にも留めず男は口を開く。

「さっきもいっただろう、貴様には想像力が足りないのだ。
岩を出そうとばかりしていて、形状に対する意識が低すぎるぞ」

「……あ」

出鼻を挫かれた上に、予想外にも痛いところを突かれいた。
フェレトはハッとなって自分の両手をぼんやりと眺める様にしている。

「しかし、いま貴様が出したのは見間違う事ない石槍…。
オレに対する怒りが、貫こうとする意志がそうさせたのだ」

「じゃ、じゃあなに?
あたしに槍を出させるためにわざと怒らせて…」

続く男の声に、フェレトは手を下ろしながら視線を男へと移していく。
そして先程までの態度の真意を確かめる様に問いただした。
しかし、男は問いに答える事はなく…。

「くくく…、そんな事はどうだっていい!
貴様は目覚めたのだ、殺意の波動に…ッ!!!」

「…あい?」

「だはは、また会う日も来るだろう!
サラバッ!!」

ボゥン!

「ちょっ!?
げっほげほげほ…」

辺りを濃い煙が包み込む。
男は謎の言葉を一気に話しきり、一方的に姿を消してしまった。
それが目的だったのか、フェレトに魔道の初歩的なコツと、多くの疑問と怒りを残して。

「な…、ななな…、なぁーんなのよアイツはぁーーーッ!!!」

ギュインッ!!

天を仰ぐフェレト。
誰もいなくなった跡地に木霊する叫び声。
すぐそばの石槍と共に、鋭い影を大地に伸ばしていた----。



----数日後。
レジーナ邸の廊下を揺れる翡翠色。
いつにも増して凛とした面持ちのフェレトである。

「…このままじゃダメだわ」

そう、ポツリと呟いて足早に向かった先は…、

「ん、どうしたフェレト?」

自室で漫画を読んでいたシュラグノーのところである。
部屋に入ってきたフェレトを見るやいなや、すぐに読んでいた漫画を閉じ話を聞く姿勢に入った。
それもフェレトの真剣な顔付きを見ての事だろう。

「実は…」

課題を与えられた日からの自分の状況。
数日前、跡地で謎の失礼な男と会って魔道のコツを少し掴んだ事。
このままでは母・ネフリータを打破する方法がないという愚痴にも近い嘆き。



「ふむ…」

全て聞き終え、口元に手を当てて小さく唸りを上げるシュラグノー。
フェレトの状況についてはほとんど見ていたので確認作業に近かった。
が、『失礼な謎の男』の存在が引っ掛かっていたのだ。
フェレトはというと、向かいの椅子に腰掛け、ホットミルクの入ったカップを両手で包みこんでいる。

「ネフリータは…」

「…え?」

フェレトがふとうつむき加減になった頃、静かな部屋に声が響いた。
パッとフェレトも顔を上げる。

「ネフリータのヤツは…、最初から今回の課題がいまのフェレトにクリア出来るとは思ってない。
いまのお前なりに考え、足掻いて、この圧倒的に不利な状況でどんな回答を出してくるか…。
それが今回の課題の真意だ」

「……!」

突如として知らされた『課題の真意』。
静かな口調と雰囲気が冗談などではないと物語る。
言葉もなく、目だけが驚きの色を見せるフェレト。

(ちょっといい方が悪かったか…。
だが、これでヘコたれる様じゃあ、どの道無理…)

フェレトが再びうつむくのとほぼ同時にシュラグノーの顔が翳る。
優しさと甘さの使い分け、難しいものであった。
しかし、シュラグノーは1つ思い違いをしている。

「…ふふ、母様も甘いったらないわ!」

再び顔を上げたフェレト。
そこには、嘆きでも驚きでもなく、嬉々とした好戦的な表情を輝かせていた。
今度はシュラグノーの目が丸くなる。

「百戦錬磨だろうが『翡翠の三日月』でだろうが、油断があるならッ!
ばっちり胸を借りちゃうわ!!」

「…お前」

甘いのはどっちだか。
そう心の片隅で思わずにはいられないシュラグノー。
だが、それよりも圧倒的劣勢で光明を見た様なフェレトに喜ぶ感情の方が大きかった。
ネフリータあって、この子あり、といったところである。

「ネフリータもいってたぞ?
"最初から全部出来るわけない。わずかな部分でも積み重ねればどうにでもなる"ってな。
ちょっと無茶のある持論ではあるが、アイツだって最初からあんなバカ強かったわけじゃないさ」

ぽん、とフェレトの頭に手を置き、笑って見せるシュラグノー。
フェレトは頭の上の掌の影から父を見ていた。

「…そうか、最初から全部出来なくてもいいんだ…。
父様、ちょっとお願いがあるのっ!!」

「ん?なんだ、パパに出来る事ならなんでもいってみろぉー!」

ハッと思い付いた様にフェレトが口を開く。
期日までの時間は、もう少なかった----。



  -- to be continued --
2010/06/14/Mon 05:33:32  Collaboration./CM:0/TB:0/
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